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続・怠け者の賛歌

2007.2月某日作成。 ネタの投下をメインにヲタクな小話とか雑記とか(本館夢サイトと別館二次創作サイトで共有中)

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アビス夢小説ネタSS詰め合わせ


案だけ浮かんだけどネタを書き留めておくのを忘れて先の展開がどうなるかスコンと忘れたりした夢小説用のSSを晒そうと思う。
つーか、ファイル漁ったら出てきたので。
1話だけ書いたら飽きて放置、というのも結構ある。

夢主の傾向が幼児化とか性転換とか転生とかゆーのは大好きです。最近では憑依系も好きになりつつある。誰かの身内ネタも、彩雲国物語にハマってから読めるようになった。
あ、基本はトリップが好きですよ。特にファンタジー系は。


ごっさりあります。読みたい方はどうぞ。



 キムラスカ・ランバルディア王国に仕える宰相ルイス・エランツォ侯爵。
 それが、彼女……アメーリア・エランツォの父であった。
 貴族らしい彼はいつも保身と下らない対面ばかりを気にする男で、アメーリアはいつも彼が嫌いだった。あの父から生まれたことを厭うほどだったが、彼女はそれをあまり表に出さなかったので、父との間に軋轢は生まれなかった。
 それどころか、それなりに愛されていたようだ。
 確かに、嫌味でもなんでもなく、客観的に見ればアメーリアはとても美しい容姿を持っていた。栗色の髪に、ココバルトブルーの瞳。にこりと微笑めば、それだけで周囲に大輪の花が咲いたよう。
 礼儀正しく貴族の令嬢らしい立ち振る舞いは完璧で、よく、活発な行動派で有名なキムラスカ王女ナタリア殿下と比べられていたほど。

 そんな、立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花……を地で行くアメーリアであったが、誰にも言えない秘密がたったひとつ、あった。


(お・れ・は・男・だっ!)


 ホホホと微笑む裏側で慟哭しながら叫んでいるなど、誰が想像出来ようか。
 アメーリア・エランツォ、19歳。
 貴族の娘としては既に行き遅れに一歩足を突っ込んだ彼女は、今日も今日とて、舞い込んで来る結婚申し込みの声から逃げ回っていた。



 この複雑な生い立ちについては、まず、彼女の経歴から紹介しなければならないだろう。
 アメーリア・エランツォが誕生する、それよりもずっとずっと昔のこと。
 この惑星・オールドラントでは無い違う惑星の、その中にある島国で、彼女は生きていた。否、正確には『彼女』ではなく『彼』――つまり、男として。
 年齢は今よりももう少し年上の、二十代前半。もうじき社会人になるかならないかという丁度その頃、彼は不運にも事故にあった。飲酒運転の車が突っ込んできた。彼は死んだ、即死だった――のだろう。十トントラックが思い切りぶつかって来たのだ、もし即死でなくとも、長くは持たなかったに違いない。
 ――それは、良いのだ。
 問題はその後で、『彼』が死んだと、そう自覚した瞬間に、『彼』は『彼女』……アメーリア・エランツォとして誕生してきた。
 所謂、生まれ変わりという形で。
 輪廻転生という単語を知ってはいても特に信じてもいなかった『彼』は、しかしアメーリアとして育ちながらも一向に消えない前世の記憶の御陰か、自分は女ではなく男なのだ、という認識のまま大きくなった。
 だって、心は男のままなのだからしょうがない。
 これでもし前世の記憶が消えていて、まっさらなまま生まれてきたなら話も違ったのだろう。不幸としか言いようが無い。

 男の心を持ったまま、アメーリアは女としての生を余儀無くされた。

 違和感ばかりの自分の部屋で、何度泣いたことだろう。いっそ死んでしまおうかとペーパーナイフを喉に突き当てる直前までいったこともあった。それでも死ぬことが出来なかったのは……恐かったから。
 以前の死の直前の恐怖が思い出されて、どうしても死ねないのだ。


 そうしてジレンマに陥りながら、それでも生き続けて、14歳の春。
 アメーリアに、転機が訪れる。


 ルーク・フォン・ファブレ。
 ――現キムラスカ王の妹君を妻に持ち、また自身も王族の血を継ぐ、公爵にして元帥であるクリムゾン・ヘアツォーク・フォン・ファブレの息子。
 初めて彼と出会ったのは、こっそり仲良くなっていたキムラスカ王の妹君・シュザンヌに呼ばれて行った先のファブレ公爵家のお屋敷。
 成金趣味爆発の自分の屋敷と違って、それなりに落ち着いた調度品(でも高価)で、彼は、花を見て笑っていた。とは言っても、別に嘲笑っていたとか、そういうことではない。
 彼は……ルークは、花壇に生えていた花がちゃんと育っていたのを見て、嬉しくて笑っていたのだ。

 勿論アメーリアの耳にも、ファブレ公爵家嫡男、第三王位継承者であるルークの噂は入っていた。
 冷静沈着・文武両道、何をやらせても人並み以上にこなすその様子から、貴族達の間でも、彼が王になればきっとキムラスカはより発展するだろうと噂になっていたから。
 だが、実際にルークを見て、それは本当なのだろうかと思う。噂通りの人物なら、花壇の花一つに感動したりはしない。
 けれどもアメーリアには、その姿こそが好ましく映って見えた。正直、噂を聞いた時のアメーリアの感想が「そんな子供嫌味以外のなんでもねぇ」だったので尚更だ。
 その後、シュザンヌに色々と話を聞いて、彼が数年前の誘拐事件(ああ、そんなものもあったなと今更思い出す)の際、恐怖のあまり記憶を失ってしまったことを知った。

 話の後、今度は直接ルークと会って話をした。彼は口は悪かったが、アメーリアの想像するルーク像とは掛け離れていて……
 貴族でご令嬢だが実は男で庶民なアメーリアと貴族だけど子供で純粋なルークは、すぐに意気投合した。

 ルークとの出会いによって、アメーリアは漸く、この世界で前向きに生きてゆくことを決めた。

 ……自分が女であることは、やっぱり受け入れにくい事実ではあったのだが。


*この後確か、夢主とガイが身分の垣根を越えた友情を築いて(夢主の元の年齢とガイは同年代だから)何故か夢主にだけ発作が出ないガイが夢主に惚れて、渋々正体(というか、前世の人格があるとか元は男だとかそういうこと)を話して、一時的に一方的な険悪状態に陥るも(だって前世とか信じられないから。下手な作り話をするほど想いを寄せられるのが嫌だったのか、みたいな)結局信じてもらえて、ルークと三人で悪友トリオになる、みたいな感じだったと思うんですが……よく覚えてない。



 ……信じられない話かもしれないが、一応聞いて欲しい。

 あたしは、つい最近まで『普通の女子高生』の肩書きを持つ一般人だった。
 特別強いわけでも、頭が良いわけでも無く、ちょっとゲーマーな程度。
 そんなあたしが『普通の女子高生』で無くなってしまったのは……半年前の深夜、TV画面に吸い込まれてしまったことから始まる。
 ――いやいやいや。嘘でも妄想でも夢でも無いんだよコレが。
 頬を抓れば痛かったし、眠っても現実世界には戻れなかった。
 ご丁寧に制服姿で――いわゆる、異世界トリップを果たしてしまったあたし。野垂れ死んで堪るものかよとばかりになんとか生きていく術を探していたらあっという間にひと月が経過して。
 あたしは……文字通り『運命』とも呼べる人たちと出会ったのだ。

 場所は、ハーメンツの村。
 出会ったのは、スタン・エルロン、ルーティ・カトレット、マリー・エージェント。そして――リオン・マグナス。
 此処まで話せば、もうお分かりだろうか? ――そう、あたしがトリップしたのは紛うこと無き『Tales Of Destiny』の世界。
 目の前にいたのは、何を隠そう、あたしがトリップする直前までプレイしていたゲームのキャラクター達である。



 と、まあ、此処までは――いやホントは良くないけど――良かったんだよ。
 意味は分からなくても、不審がられても、結局スタンたちと同行出来るようになったし。
 リオンも、ちょっとだけ、あたしに心許してくれたし(怒ると電撃が来るのは変わらずだったけど)
 これならば、この世界の未来を変えられるかもしれない。


 ……そう思い始めた矢先、あたしは再び、世界を飛んだ。


 何のことかって? いや、あたしだって良く分からなかったわよ。だって、ノイシュタットの宿屋で眠りについて……目が覚めたら、見たことの無い部屋に居たんだから。
 内装から『宿屋の部屋か』っていうのは想像出来たけど、あたしが泊まったのは、こんな部屋じゃなかった。
つか、そもそも。
 ……窓の外が一面の銀世界に変わっていたって云うのが有り得ない事態なワケで。
 一瞬『ファンダリアにルーラしちゃったか!?』と一人ボケ突っ込みするぐらい混乱していたんだけど、すぐにその混乱は収まった。
 冷静になったのではなく、更なる混乱があたしを襲ったからだ。

『あ、コウ、起きた?』

 ――その声が聞こえてきた瞬間、あたしが固まってしまったのは仕方の無いことだったと言える。
 だって、それは、トアル美少年剣士の相棒であるソーディアンの声で。
 こちらの世界に来てから久しく聞かなかった声で(だってゲーム画面じゃなかったし、あたしソーディアンじゃないし)


「――し、ししししししシャルうぅぅぅッ!!?」
『あれ? 僕の声が聞こえるんだ』
「え、ちょ、なんでwvftrbgyんふjみこ!?」

 ……ワケも分からずただ混乱の坩堝に陥るあたしと、会話が出来ることに吃驚するシャルティエ。
 宿屋の主人が朝から騒ぐなと注意しに来てくれなければ、その混乱は収まらなかったであろうことを此処に追記しておく。

* * *

「……つまり、シャルにも、此処が何処なのか分からないってワケね」
『うん。最初はセインガルドかな、と思ったんだけど……どうも感覚的に違うみたいだし』

 ……宿屋の主人が帰った後。
 漸く頭の冷えたあたしとシャルティエは、ドアの外に誰も居ないのを見計らって、此処に至るまでの経緯を話し合っていた。
 あたしは先述した通りで、シャルティエはと云えば、自らのマスターであるリオンと共に部屋に入った後、彼が眠ったのを見届けて――……其処から先の記憶が無いのだと言う。
 気が付けば見知らぬ部屋のベッドに立て掛けられていて、其処には、あたしが眠っていたのだそうだ。

「しっかし……参ったね。シャルの勘では、此処はファンダリアではない。あたしとしても、なんでこんなところに居るのか分からない。しかも、シャルの声が聞えるし……」
『まあ僕は、コウと話してみたいと思ってたから結果オーライだけどね』
「はは……」

 シャルの、励ましてるんだか無いんだか(多分、前者だと思いたい)の言葉に苦笑を洩らしつつ、あたしは窓の外を見る。
 『Tales Of Destiny』の世界に、雪国はたった一つ。それこそがファンダリアであり、それ以外に雪国なんて……訂正。今あたしたちが泊まっているような大きな宿がある雪国なんてのは存在しないはず。
 PS版はとっくにクリア済みのあたしだからこそ、よっく知ってることだ。

「取り敢えず……宿屋の主人に、さり気無く聞いてみるしかないだろーねー……」
『うん……』

 二人(?)して頷き(??)合うと、あたしはシャルを腰に差して、階下の受付まで足を運び……


 そこで、またしても混乱した。


「……けっ、ケテルブルク、ですか……?」
「ああ、そうだよ……どうかしたのかい?」
「いえー……なんでも……あはははは」

 なんとか引き攣った笑いを浮かべてその場を後にすると、あまりの非常識事態に呆然としたあたしへ、シャルの声が届く。

『コウ……?』
「……シャル……あたしたち……世界単位で移動しちゃったみたい……」

 は? とかなんとか、シャルの間の抜けた声が聞こえてくるが、既にそれに答えられるだけの余裕が、あたしには残っていなかった。
 ――ケテルブルク。
 トアル帝国の一都市で、トアルキャラの出身地。ワールドマップの北部に属するため、まあ、雪国なのは理解できるがそれにしても。

 ……いきなり『Tales Of THE ABYSS』の世界に飛ばされるって――どういうことだよローレライ!?
 心の叫びを口に出せるはずも無く黙り込んでしまったあたしに、シャルの戸惑ったような様子が伝わってきた。

 ――本日、ND2017・シルフリデーカン・20の日。
 本編が始まる、約三ヶ月前の話である。


*にわかソーディアンになった夢主とソーディアン・シャルティエが行くTOAストーリー改変物語。夢主は現代→TOD→TOAと多重トリップ。
*多分TODだとリオン落ちだろうリオン本命じゃないけど。一番好きなのは空気王(待て
*致命的なのは、TODの内容をほぼ忘れてるってことかな。書けねぇよ。




 はいコンニチハ。わたしは元現代人元女子高生元一般市民と、元の多い現在軍人さんです。
 ついでに言うと此処は異世界で(頭がおかしいとか言わないで泣けるから)、「オールドラント」などとかいう惑星だったりします。
 ……はい、勘の良い人はもうお分かりですね。分からない方、ウィ●ペディアで調べて下さい。

 そう――此処は、あの『Tales of THE ABYSS』の世界だったりするんですね! アハハ思わず涙が零れそう!

 外は魔物、盗賊などと物騒な世界。身分証明も何も無かったわたしは、取り敢えず手っ取り早く生活の糧を手に入れるために軍に仕官しました。余計に物騒だろとは思うものの、人間金が無きゃ生きていけないんです。悲しい事実ですね!
 で、流石に普通ルートを通って仕官すりゃまず怪しまれるので、裏技です。レッツ現地徴兵! いやー実家が剣術道場で剣道七段とかいう特技持ってなかったら今頃は春を……ごにょごにょイエイエなんでもありません。
 とにかくわたしは、現在小競り合い真っ只中の戦地に飛び込むなどとか云う無茶をかまし無事定職をゲットすることに成功しました。ぶっちゃけ、その頃のことは思い出したくありません色々エグいんで。

 ま、其処までは順調でした。

 ――いえね。わたしもそれなりのゲーマーさんだったので、そりゃ萌え! とかあるわけですよ。当然ですよだって此処アビス世界ですよ!
 しかしそれ以上に、わたしとて命は惜しいんです。うっかり仕官してそこそこ頑張ったりしても、一応平和ボケした日本人でしたから。
 しかし。
 しかしです。
 多分、仕官した先が悪かったんだと思います。
 確かめもせずやっちゃったもんですから、後の祭りですよ。

 ……やっちゃったんです。接触しちゃったんです。アビスのメインキャラに!



「はい顔を上げて。話す時は人の目を見なさいと教わらなかったのですか?」

 にこにこ微笑むその赤い目は実は笑ってない。ヒィエエエ怖い怖いよ!
 どうせメインキャラに接触しちゃうんだったらせめて某ガン●ムキャラと同じ名前の少将を寄越してくれれば良かったのに、陛下の馬鹿!

「………申し訳、ありません……カーティス大佐……」

 冷や汗ダラダラ、心臓は嫌な意味でロックなドラマーの如き強烈さを以て鼓動を打ち鳴らしておりますハイ。

「――まあ良いでしょう。精々頑張ってください、副・官・殿」
「………………………………はい

 死刑宣告と同等の響きが耳を通り抜けて、わたしは、心の中で涙を流すのでした……マル。


*夢サイトのゴミ箱にある傍観主シリーズを連作にしようと思って立ち上げたけど実はアビス全然進めてなくて、ジェイドのキャラが掴めてなくて止めた。今やったら気弱ながらもひっそりツッコミは入れてくれる子になるんじゃないかな。書かないけど。


 ある日、あるとき。
 俺はやっぱり望まないままに異世界に飛ばされて、したたかに生きる術を覚えていたが故に生き残って。
 ――賞金目当てに参加した闘技場帰り、俺はうっかり子供をひとり、助けてしまった。

「せんせいー」
「なんだ。っつか師匠呼びは止めれ」

 とてててと走ってくる朱色の子供の呼び声に振り返り、俺はそのまま突っ込んできた体を受け止めてやる。
 言葉遣いや仕草は拙いものの外見だけはそこそこ成長しているので、子供ミサイルはそれなりにキツいもんがあった。しかしまぁ、受け止めきれないほどでもない。俺だって鍛えてあるのだ。外見年齢にして五つは離れている子供相手に倒れるほどヤワには出来ていない。
 周囲に俺以外の人間が居ないのを確認しつつ、俺は、子供の頭を撫でてやった。

「どうしたルーク。またなんか面白いもんでも見つけたか」
「んー。ガイがおねーさんたちに囲まれてたのが面白かったー」

 ガイと云うのは、俺が使えているファブレ公爵家の使用人だ。歳が近いので、そこそこ交流を持っている。
 ……時折浮かべる剣呑な瞳が気になったりはするが。
 容貌はそれなりの美形なのに女性恐怖症と云う、なんとも哀れな男である。

「でもそうじゃなくてぇ……せんせい以外の剣のせんせいが出来るんだって」
「俺以外の? 初耳だな」

 ファブレ公爵家での俺の立場は、公爵子息であるルークのいわゆる剣術指南と護衛。
 家庭教師も兼ねているので他の剣の指導者が出来たからと言って解雇されるとは思えないが、なんでまた今頃……と疑問に思わないでもない。
 既にルークは、剣術の基礎の方はマスター済みだ。今から別の流派を学ぶとなると、また一からやり直しになってしまうんだが……公爵殿は何を考えてるんだか。
 ま、俺は別に、クビになんなきゃどっちでもいーんだけど。

「……せんせい、辞めちゃうの?」

 ふむふむと思案していたら、ルークが泣きそうな目で俺を見上げていた。うっすらと瞳が潤んでいて、俺は苦笑を漏らしつつ、安心させるように口角を吊り上げる。

「そんなこた無いと思うぜ? これでも俺は闘技場の上級戦制覇者だからなぁ……」

 賞金貰うだけのつもりがうっかり優勝までしてしまった俺の馬鹿。まぁ、その御陰で高給取りになれたんだから良しとするが……
 ――それに、ルークにも会えたしな。

「せんせいは辞めない?」
「辞めない辞めない(多分)」

 心の中で付け加えた一言はルークには伝わらず、朱色の子供は安心したように、ほにゃりと相好を崩した。
 うんうん、子供はやっぱり素直が一番だよなー。


*青春主inアビスの別バージョン。というか、書き始めたのはこっちが先。でも気に入らなくて放置。確か、ガイは再教育済みだったような。それにしてもなんかこの青春主、今よりぐっと老成してるな……



『ほんの僅かな時間だけでも良い。ちゃんと、あの子と向き合いなさい』

 誰よりも敬愛するお兄様に言われて渋々訪れたファブレ公爵家。正直な所、お兄様が何故あそこまで、ルークの偽者であるレプリカに心を砕くのか、私には理解出来ない。だって彼は偽者。人間ですらない人形ではないのか。
 思いながら、メイドに案内されて、ルークの私室の前に立つ。
 本物のルークが使っていた部屋とは違う、中庭に面した部屋。一見美しく彩られた其処は、けれども屋敷の外へ逃げ出せないように設計されて作られた場所。――レプリカが逃げ出さないようにしているのだ。そんな言葉はすらりと出てくるのに、反面私の心の何処かが、酷く疼く。
 それを故意に無視して、彼の部屋の扉を開けた。

「あ、なたりあだー」

 視界に飛び込んできた彼は、私を目にした途端、花が咲いたような微笑を浮かべた。その姿があまりにも純粋で無邪気で、無意識の内に後ずさる。偽者のくせに、と何度も言い聞かせるのに、耳の奥に鳴り響く微かな警鐘は未だ鳴り止まない。一体、私は如何してしまったのだろう……

「? なたりあ、どっかいたいの?」
「え……」
「おかおが、かなしそうだよ」

 そう言った彼の方が余程悲しそうな顔で、今にも泣き出しそうに顔を歪めたので、私は慌てて彼の側に駆け寄った。ついさっきまで偽者と断じていたことを頭から消して、反射的に――……気付いた時には、きょとんとした彼と、自分の行動に驚く私が居て。

「わ、わたくし……」

 狼狽する。此処に来るまでは心から彼を蔑み切っていた。なのに、彼を目の前にして、私はそんな私の思いがとても恥ずかしく、情けないもののように感じてしまって。
 ――どうして、貴方は。

「なたりあ、なかないで。なたりあがかなしいのはおれもやだよ……」

 人の痛みを自分のことのように受け止めて、泣き出す彼。その涙が美しい宝石のように光り輝く。レプリカ。偽者。人形。――複製品。
 兄から『今のルークはレプリカと呼ばれる存在だ』と聞かされた時に感じた思いが、粉々になって溶けてゆく。浄化するのは彼の心。優しい、優しい、無垢な子供の。

「……っ」

 彼を抱き締めて、泣いた。私のために泣く彼と、自分の心の醜さに気付いて泣く私と、二人で抱き合って、泣いた。肩に感じる暖かな体温は静かに、ゆっくりと、私が凍りつかせていた大事な何かを解放していく。
 ――彼を『偽者』と、そう呼ぶことなんて……私には出来ない。
 自分の中に芽生えた(或いは、認めることの出来なかった)感情が、世界を作り変えていく。

「ルーク、もう一度、自己紹介から始めさせてくれますか?」

 私が問うと、不思議そうな顔をした後、ルークは嬉しそうに頷いて、笑った。


*ほぼただの二次創作だろ、とツッコミ入れつつ、一応夢小説の断片。元・現代人主人公(女・生前は病弱で体が弱かった)が病死して、オールドラントに。ナタリアの兄=第一王位継承者に転生トリップ。キムラスカ勢救ってルーク救ってアッシュ救って同行者とかあの辺皆再教育して髭をボコる話(笑)
*めんどいのでボツ。(ミもフタも無い)

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